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蜑崎生は伴当共侶丶大庵主に従ふて関宿路へ立退べし。犬塚、和殿と姥雪と蜑崎生を相資けて■ソウニョウに干/来る敵を防ぎなば万に一も過なからん。又犬川犬田犬飼は夥兵三四名を従へて這里を距ること三四町、東の茂林を盾にして其辺なる樹の枝に紙幡を掛け多勢と見せて敵の先鋒に疑せて、その撓むを撃捕るべし。又愚弟は犬山犬村と共侶に残る夥兵を相従へ這草庵に火を放て煙を揚て敵を分ん{第百二十四回}。

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爾程に代四郎は件の軍議をうち听て倒に歓ばず找出つゝ難するやう、恁いはゞ、無礼也とて叱られまつる歟知らねども小可偶故主に逢て今この危窮に及ぶ折、ふり捨て阿容々々と安房へ退りかへらん事は憚りながら本意にあらず、死ぬるとも生るとも共侶にとこそ思ひ候へ、願ふはこの侭留置て道節が隊に隷たまへ、いかで/\、と切なる願ひを道節聴かず声ふり立て、そは亦無益の口誼也、嚮にも既にいはざる事歟、和老も今は里見の家臣、我們と朋輩なるものを私情を演るはその義に違へり、最烏滸也、と窘れば、小文吾荘介大角は共侶に慰めて皆云云と諭すにぞ、代四郎才に承伏して倶に准備をしたりける{第百二十四回}。

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