古事談第一王道后宮(冒頭)

称徳天皇道鏡之陰猶不足被思食テ以薯藷陰形令用給之間折籠云々仍腫塞及大事之時小手尼(百済国医師其手如嬰手)奉見云帝疾可癒手塗油欲取之爰右中弁百川霊狐也ト云テ抜剣切尼肩云々仍無療帝崩(後略)

称徳天皇は(膝と見まごうばかりの)道鏡の陰にすら不足を感じていた。薯藷を張り型として用いていると、折れて中に入った部分が取れなくなった。小手尼(朝鮮半島で比較的日本と親しかった百済の医師で手が嬰児の如く小さかった)が、自分なら油を手に塗って、張り型を抜き取れると申し出た。しかし、小手尼を狐の化け物だと思い込んだ中弁の百川が、肩先に切り付けた。こうして治療は行われず、帝は死んだ。

山芋はカブレるって聞いたこともありますがぁ、うーん。変な話ですね。だいたい、いきなり女医さんに、「狐也」と叫んで切り付ける所も変。野性味たっぷりのFoxyLadyだったのかもしれませんが、だからと云って切り付けるか、普通。まぁ、天皇に死んでほしかったのかもしれないけれど、何だかねぇ。でも、この称徳(孝謙)女帝は、道鏡の前にも寵愛した男性がいたりした。女性なんだから男性を愛するのは別に悪いことじゃないと思うけど。いや、女性を愛したって、別に悪いことはないんですけれどもね。道鏡の膝みたいなのが入ったんだから、赤ん坊の手みたいな尼の手ぐらい油なんか塗らなくたって大丈夫だと思うけど、いったい何を想像したんでしょうかねぇ、百川さんは。中国の皇帝に狐が取り入って骨抜きにしたって話はあるし、日本の天皇にも近付いた話があります。八犬伝でも千葉介が其の狐を討った話は出てきますが、皇帝/君主すら魅惑し堕落させるのが妖狐。じゃぁ、百川さんは、此の尼さんが称徳女帝を魅惑して骨抜きにすると思ったんでしょうか。其の小さな手でフィスト・ファックして。でも、それって、スケベェな話の読み過ぎなんじゃないかなぁ(←ソレはお前だ)。だいたい、それなら、道鏡とかに切り付けろよ。それが出来ないからって、女性に切り付けるとは言語道断な気もしますね。

古事談は、昔話を集めたものです。第一章が、歴代の天皇や皇族を扱っています。例えば、こんな話も載っています。ついでに。

知足院殿仰云帝王以慈悲心可治国也上東院ノ被仰ケルトテ故殿(大殿)令語給シハ先一条院ハ寒夜ニハワザト御直衣ヲ推脱テ御坐シケレバ女院(上東)ナドカクテハト令申給ケレバ国上人民サムカランニ吾カクアタダカニテ寝タル不便ナレバトゾ被仰ケル(此事或説延喜仰云々如何)

口語訳
一条院は寒い夜に服を脱いで座っていた。女院が怪訝に思い尋ねたところ、一条院は、国民が寒い思いをしているのに、自分だけ暖かくして寝るわけにはいかないからと、答えた。

意訳
一条院は寒い夜、服を脱いで座っていた。いや、今夜は女院とシッポリしようと企んだのである。女院が部屋に入ってきた。「ん? アンタ、この寒いのに、なにしてんのよ」機先を制された一条院は、まさかセックスしようとは言えなかった。彼にだってプライドぐらいはある。「え? あ、いや、これは、何だ……、えぇっと、オホン、ほら、みんなが寒い思いをしているのに、自分だけヌクヌクしてちゃイカンと思ってな」女院はマトモに取り合わず布団に潜り込みながら「ふぅん、じゃぁ、税金の免除でもすれば」「いや、それとこれとは……」「まぁ、良いわ。じゃ、おやすみ」「え? もう寝るのか」「寝るわよ。夜だもん」「あ、あぁ、そうだね。おやすみ」「おやすみぃ」
意訳と云うよりは、捏造ですけれども、でも、帝が寒い思いをしたって、人々は暖かくならないんですよね。寒い思いをする人が、一人増えるだけの話。読者は馬鹿じゃないんだから、そんなことは分かってる。しかも、冒頭で、芋を使った自慰で死んだ女帝の話が掲げられている本です。帝が寒い夜に服を脱いでたからって、「ありがたやありがたや」なんて思う筈がない。よって、筆者の意を汲んで(?)訳してみました。