◆摩利支天とは以下の如き仏様である。
       【原 文】
末利支提婆華鬘經
    開府儀同三司特進試鴻臚卿肅國公食邑三千戸賜紫贈司空諡大鑒正號大廣智大興善寺三藏沙門不空奉 詔譯
如是我聞。一時佛在舍衛國祇樹給孤獨園。與大阿羅漢二百五十人倶。復有無量大菩薩衆。彌勒菩薩曼殊室利菩薩觀世音菩薩而為上首。及末利支等諸天龍神八部前後圍遶。爾時舍利子即從座起遍袒右肩。右膝著地合掌而白佛言。世尊。未來末世衆生作何法得脱諸難。佛告舍利子諦聽諦聽。我今為汝説於此事。爾時衆會歡喜踊躍重復勸請。時佛世尊即説此言。有天名末利支。常在日前行。日不見彼彼能見日即説咒曰。南謨佛陀耶 南謨達摩耶 南謨僧伽耶。怛■(ニンベンに爾)也(二合)他阿■(口に羅)迦摩斯末迦摩斯阿豆摩斯支婆羅摩斯安達檀那摩斯摩利支波羅摩斯那漠率都羝娑■(口に縛)(二合引)賀。王難中覆護我。賊難行路難失路曠野。晝日夜中水難火難。羅刹難茶鶏支■(ニンベンに爾)鬼難中毒藥難。佛語真實法語真實僧實語。天實語仙人實語覆護我咒曰。怛■(ニンベンに爾)也(二合反)他阿羅拘利阿羅拘利吉利的羝勒叉勒叉我某甲薩婆婆油(上)■(缶に本)陀羅菩提婆伽夜栖(斯亞反)裨(毘)■(馬に及)婆賀。佛言若有人欲行此法者。一切法中此法最勝。若人欲得供養末利支天者。應用金若銀若赤銅若白檀若紫檀。應作末利支天形像。其造像法。一似天女形。身長大小一寸二寸三寸乃至一肘。其中最勝者一寸二寸為好。其作像又須得最好手博士。遣受八戒齋日日洗浴。著淨白衣作之。其價直之者隨博士語索不得違。作此像已。若■(クサカンムリに必)芻欲行遠道。於袈裟片中裹著彼像。若持五戒優婆塞。於頭髻中盛著彼像。大小便時離身放著。不得共身上屏大小便利。次説印及壇法。交叉二小指二無名指。在掌中右押左。二頭指直豎頭相著。二中指各■(テヘンに必)在二頭指背上頭相■(テヘンに王のうえ突き抜け)著。二大指並豎縛二頭指側。大指來去。此是身姥陀羅尼印准前身印。上各屈二中指上節。頭向大指垂甲相背。又屈二大指上節。頭向掌中。此是頭頂印。若比丘比丘尼。袈裟中裹前像。若俗人頭髻中著像。即作此頭印以案像上。二十一遍誦咒行於道路。准前身印唯開二頭指頭二分許。即是護身印用之護身法。左手大指頭押無名指第一節文。以餘四指把拳即是歡喜印。若作此印誦咒向王臣邊者。即前人歡喜左手屈臂牽向於前。以頭指已下四指把拳。復以大指押頭指甲上。次開掌中作孔。以右手申掌。從左手節上向。手掌磨之到於孔上。即以右掌覆蓋指孔上。心裏作之。左手掌是末利支心。右手掌是末利支身。於左手掌心中。我身隨在末利支天藏我身著。末利支在我頂上護於我身。此是末利支印。口中數數誦咒者即得大驗。行者不得喫飯。唯食大麥乳酪酥菜等。若不堪忍者自乞飯喫。不得喫於衆僧之食。如是滿足十萬遍即得驗也。於淨潔道場中安末利支像。已行者日日洗浴。若不洗浴洗手漱口入道場。作身印喚末利支。安置已種種供養。日日誦咒一百八遍或一千八遍。如是乃至滿十萬遍訖。然後於好處所料理於地。拔去惡物樹゚賦「礫毛骨等已。堅築於地使平坦之。其作壇日者臘月十五日。以五色作之。中心著末利支座。座上畫著華座并像。式即東面安使者。名婆多羅室利夜。北面安使者。名計室■(ニンベンに爾)。南面安使者。名摩利■(ニンベンに爾)。然後咒師喚之安置。以香華飲食八槃燈十六盞。種種供養已。咒師在西門面向東坐。誦咒一千八遍。種種供養訖然後發遣之。更有別法日月蝕日。作此壇法者大得驗也若人欲東西遠行在路者。先作水壇。喚末利支安置已。取粳米華和酥。咒一遍一燒滿一千八遍并誦咒。隨所欲去處趣者得大驗。又更一法七日之中日日作水壇。喚末利支安置。復著火爐然穀木樹火。於此柴火中。咒燒粳米烏麻一百八遍并誦咒。日三時時別一百八遍。乃至七日作此法訖。向王臣邊者前人散走他。又更一法若欲論議。依前法火燒梨枝一百八段。一段一尺并咒七日。作此法者得大論師也。又法依前法火燒酥一百八遍并咒者。一切禽獸毒蟲不得侵害。又法若人欲得見末利支者。依前法以穀樹柴然火。取天木二十一段。以酥蜜酪塗之。火燒并咒日日。唯喫粳米飯乳酥三種。不得食餘物。七日之中日日倍勝種種供養。如是七日作此法時。第七日中末利支身現。入道場問行者言。汝欲求何法。是時行者隨意答之。時末利支聽許歸去即知得驗。一切諸天亦皆歡喜。又法七日之中毎日三時。火燒茴香草白菖蒲白芥子三種。并咒訖向羅闍邊去者前人歡喜。又法欲向官人邊去者。依前法火燒白芥子。日日三時時別一百八遍并咒。七日之中唯食粳米乳酪三種。不得食餘物。如是七日訖向官人邊去者前人歡喜。又法依前法。火燒阿末羅梨葉一百八遍并咒。如是七日治一切鬼病則得驗。又法依前法。取大麥好擣(勿使末)以蜜和作團。大如李子一百八箇。七日之中行者初日全不喫食。餘六日任意得食。日日火燒所團大麥并咒。作上歡喜印如是盡燒一百八團訖。以水滅火後附其煙上薫兩手掌。誦咒二十一遍。願云使我之手作一切法種種得驗者。即一切得驗前人歡喜。又法若人熱病。取好青草擬口。誦咒二十一遍。以摩病者五十四遍并咒者即差。又法日日一遍誦咒。三遍作大護身。三遍作大結界。五遍誦咒者所愛之人任意即得。六遍誦咒結界。夜入塚墓一切無畏。又法若欲遠行。先於私房七遍火燒薫陸之香并咒訖。著道行之時數數誦咒行者。路中賊難鬼難等皆不得近也。又法依前法。白月八日於淨室中。取好香花與粳米飯少少。火燒一千八遍。行法之人一日不食。著淨潔之衣作此法者。前人尊重恭敬供養。又法取牛糞未落地時。以器承取莫著別處。即用和水作水壇。壇中心著佛像或佛舍利。復取母犢並黄牛乳作酥。盛著金■(缶に本)中。以右手無名指攪之。於酥并咒。其酥之上火若出者。即知得大聰明一誦千偈。若火不出唯煙與煖者。即知得可聰明。若不得煙煖。自身伏地擬口於酥器邊。以右手無名指為[槎-工+目]喫酥。即得少少聰明。又法於城東門外。好料理地作四肘壇。取坏■(土に傳のツクリ)五箇。中心著一四面各一。又以四水罐盛水。以柳枝塞口。於四面■(土に傳のツクリ)上著之。又取紫檀摩研水中。即以其水灑於壇上。以赤花供養於壇。復以胡撚支四枚。各著四水罐邊。復以五色線遶壇四面。於壇四面之外。以種種花香飲食。■(サンズイに半)與諸鬼。於壇四門敷青草座。咒師著好淨衣結跏趺坐於青草上。喚摩利支及諸使者安置。種種供養。咒師手把青草誦咒。以草從自頭向脚摩之一百八遍。咒師手作字末利支身印。印中把青草向自頂著。遣一弟子將壇上四水罐。一一灌於咒師頂上竟。然後咒師著好淨衣作護身印。念佛禮佛禮摩利支訖。取龍樹花與龍腦香。及酥合香三種。七日之中咒師唯食粳米牛乳粥。不得食餘物。日日咒於上三種藥一百八遍。乃至第七日。將彼藥安自頂上右肩左肩心上咽上額上者。得驗。此語不問有別法用。又法依前。若人患痔病。取黒線作咒索。病者頭東脚西臥於床上。以索繋病者腰。又以引索繋其床脚。并咒二十一遍者痔病即差。若人患頸治法。准上唯改前繋腰。繋其頸上為異。又法取江水兩邊泥土。以作一百鬼形像。其中鬼王名曰毘那夜迦。此鬼王頭者作象頭形。其餘諸鬼頭各各別作諸禽獸形。其身手脚總作人形。大小長短四指或八指許作之。取紫檀木以於水研之。用以其水和泥。於地作壇。以五色土。於壇之上作座處。中心一座北面二座。南面二座東面二座。於中心座上著於鬼王像。其餘六座上總分著九十九鬼像。以諸香花及燃七盞。酥燈飲食等種種供養。并取安悉香和酥。火燒用以供養。咒師於西門坐面向東。誦末利支咒七遍。以種種色線咒二十一遍。然後取壇三面諸鬼像。聚就於中心鬼王邊一處著之。以其七色線。總縛著彼鬼像訖。取犢子糞一百八團。一一火燒并咒。燒一一團時一誦咒。■(馬に及)婆(二合引)訶(引)於前先唱云縛一切鬼。然後唱云■(馬に及)婆(二合引)訶(引)如是盡一百八團竟。別處掘地深至人腰作孔。將彼所縛諸鬼像著於孔中。以諸香花種種飲食供養彼鬼。然後以上塞於孔上。堅築以地平復。其鬼永不得出。若彼咒師業病臨死之時。心中作意解放彼鬼。彼鬼得脱。若作此法者即得末利支大驗。一切咒驗。又法一生之中日日唯食粳米乳粥。數數誦咒得大聰明。四姓之中得婆羅門大愛念。若火燒酥酪乳者。刹帝利愛念。若火燒大麥乳酪者。毘舍愛念。若火燒烏麻滓者。首陀愛念。又法若人鬼病口全不語者。咒水二十一遍■(サンズイに半)之即語。又法鬼病口合不語。以袈裟角咒二十一遍。打之即語。又法手捻於灰。咒之七遍散四方結界。又法以泥作彈丸十箇各擲十方作大結界。又法若婦人難産。咒烏麻油七遍。以摩臍上即得易産。又法若共他論議得勝時。被他相憎嗔一隻相言。又共他鬥諍。被他相言枷鎖官邊。問罪是非之時。取白菖蒲咒二十一遍。繋著右臂。復以左手作歡喜印并咒之。即得大勝之理。又法若人被毒蟲螫者。咒師取五色線作咒索二十一結。以繋自右手臂上訖。向彼螫人邊去。取柳枝咒之。數數以手摩彼人即差。若人被惡毒蛇所螫臨死之時。咒師以自手掬取水。漱口七遍誦咒。以其水■(サンズイに半)於病者二十一遍竟即差。又若人身生惡瘡者。和泥塗於瘡上二十一遍并咒即差。又若畜生遇時氣病者。於城正中央然穀樹火。以牛乳火燒并咒即差。夜裏應作此法。其明日午時還燒穀樹火。取白芥子油與白芥子相和。火燒一千八遍并咒即差。又法取倶■(口に魯)陀木一千八段(此木相状似菩提樹)一一火燒并咒各一遍者。一切鳩槃荼藥叉等鬼神皆悉歡喜。若火燒冬[クサカンムリ/瓜]少少一千八遍者。一切魍魎悉皆歡喜。若取塚墓之上樹木一千八段。與烏麻相和火燒并咒一千八遍者。一切大惡鬼神歡喜。又法若取菩提樹枝一千八段。一一塗酥火燒一千八遍并咒者。四大天王歡喜愛念。又法若人癲病者。咒師取一切五穀相和。以手掬取咒之火燒一千八遍者。鬼神歡喜即得治病。若取安悉香擣之為丸。塗酥火燒一千八遍并咒者。摩醯首羅及傍邊天一切歡喜。若依以前法作壇。種種供養。壇中心著佛像或佛舍利。取喝■(口に羅)迦沙彌陀木(此是苦練樹之別名)三千八段。與酥酪蜜中塗之。一一火燒各一段一咒。如是盡三千八段。作此法者造四重五逆罪滅而得驗。若行者依前法作水壇訖從白月八日至十五日。日日取紫薑木一千八段。塗酥火燒并咒者。末利支即來入道場遂其所願。爾時行者眼見末利支身得大驗。若一日不食作此法種種供養者。得末利支大驗。又若欲得錢財者。黒月十四日至十五日兩日之中。黒日三時取烏麻粳米及粳米花三種。火燒并咒者即得錢財。又法若欲得縛魔者。七日之中日日取苦練樹枝。一名菩提樹。一千八段。一一塗於白芥子之油中火燒者。即得縛。若咒師或俗人行此咒法時。官府知之捉得者。被枷鎖縛時。數數誦此咒縛永不得。若人相瞋取烏麻油滓與粳米糠相和。火燒一千八遍并咒者。即得前人瞋即歡喜。若取烏麻火燒一千八遍者。前人愛念歡喜。又法若欲得錢財者。七日之中日日取石榴草莖。長六指一千八段。一一火燒并咒者。即得錢財。又法欲向他人處索所愛物者。取白菖蒲咒之一千八遍。繋自臂上乞之無所不得。又法二十一日日日三時。取安悉香擣之為丸一千八丸。用塗酥酪蜜中。一一火燒并咒者。向王百官邊去者前人歡喜愛念。若欲得作綱維者。七日之中日日三時。取衆名香擣之為丸一千八丸。一一塗酥火燒并咒者。即得綱維。又法若行者洗浴入道場作水壇等種種供養。喚末利支安置。如是滿十萬遍。作此法訖然後口云結界(莫手作印)。隨行者所願皆得成就。一切難事易得弁之。然破他人作法之事。爾時末利支白佛言。世尊我有別法。今欲説者用好紫檀木廣三指長三寸。其木一面刻作末利支形。作女天。其像左右各刻。作兩末利支侍者。亦作女形。復以別紫檀木作蓋蓋之。作此像已。欲行遠道。將於此像不離自身。隱藏著之莫令聽人知。日日數數誦咒。若有所願欲作水壇。壇中心安像。喚末利支安置。以種種供養。復取蓮華一百八箇以供養之。其供養法。手取一一蓮華咒之用以供養。復以烏麻粳米火燒一千八遍并咒訖。把像種種得驗(此語應知)上件諸法皆作水壇等。種種供養始得驗之。末利支説此法竟。與諸天龍八部禮佛而退。怛姪他阿羅居隸阿羅居隸吉利帝底薩婆伽羅醯鼻(毘簸反)薩菩烏波塗瑟■(歯に斉)鼻(反同前)薩婆伊底■(マダレに痩のツクリ)烏波■(口に羅)髀鼻(反同前)勒叉勒叉莫麼(某甲)耶寫莎[口*縛](二合引)訶(引)有一本云。作天像法。其像二手。左一手屈臂向上平横。當左乳前把拳。拳中把拂。形如講法師高座上所把形。於其拂中作西國萬字文形。亦如佛像胸上字。字四曲内各作日形。一一著之著四箇日形。其拂上作焔形。右一手申臂及指解垂下。其作像法。畫像一種無別。其像身長一寸二寸乃至一肘。怛姪他阿羅拘梨阿羅拘梨鶏利底■(足に多)薩■(口に縛)(去)伽■(口に羅)醯鼻(比可反)薩菩■(缶に本)■(足に多)羅髀鼻(同上反)薩婆伊都■(マダレに痩のツクリ)■(缶に本)■(足に多)■(口に羅)■(革に卑)弊曷勒叉曷勒叉麼麼(某甲)夜寫莎■(口に縛)(二合引)訶(引此一咒欲以■テヘンに交/言)。曼殊室利菩薩説咒曰。歸命同千轉頭。那冒曼殊室利曳矩摩羅菩多夜怛姪他醯利底瑟■(口に託のツクリ)(上二合)怛婆羯羅(上)趺途徙摩遮羅(上二合)莎■(口に縛)(二合引)賀。又若在道行逢賊時。咒手大母指急把指。遇賊無難。若咒衣袂或衣衿。左綟七遍急把誦咒而過。
除睡咒
怛姪他伊底彌底只底比迦那羶底波陀恥莎■(口に縛)(二合引)賀(引)
若人坐中多睡時。於佛前至心誦七遍便少無也。
毘沙門咒曰。那謨裴■(金に樂)■(口に羅)■■(白に番)拏寫摩訶曷■(口に羅)闍寫施■(革に卑)娑婆(二合引)呵(引)施■(白に番)跋趺犁娑婆訶。若咒淨油七遍若二七遍。用塗臥所。乞財物等得如所願。
咒一切賊法
補魯那補魯那主■(口に魯)訶主■(口に魯)訶薩寫娑婆(二合引)訶更有咒縛賊咒伽■加■僧伽■我今為加■終不為解加■(いずれも口に託のツクリ)。又若被賊。燒香誦咒。若有疑者并稱名。若不知者但當面誦咒咒之。賊即自縛自道盜物。得已然後解放大驗也。末利支提婆花鬘經
     ◆書き下し◆
末利支提婆華鬘經
府を開くことゆるされ儀は三司と同じ、特に試みの鴻臚卿に進められ、肅國公にして食邑は三千戸、紫のころも賜り司空のくらい贈られ、諡(おくりな)は大鑒、正號は大廣智、大興善寺の三藏沙門不空が奉る 詔(みことのり)によりて譯す
是くの如く我聞く。一(あ)る時、佛は舍衛國祇樹給孤獨園に、大阿羅漢二百五十人と倶(とも)に在り。復(ま)た無量の大菩薩衆あり。彌勒菩薩・曼殊室利菩薩・觀世音菩薩ありて、而して上首と為す。及び末利支等の諸天・龍神八部が前後を圍遶す。爾(こ)の時、舍利子は即ち座從(よ)り起ちて遍く右肩に担ぎ、右膝は地に著(つ)け合掌す。而して佛に白(もう)して言う。「世尊、未來の末世の衆生は何の法を作して諸難を脱するを得るか」。佛は舍利子に告ぐ。「諦して聽け、諦して聽け。我は今、汝に此の事を説くを為す」。爾の時、衆會は歡喜し踊躍して重ねて復た勸め請う。時に佛世尊は即ち此の言を説きて言う。「天あり。末利支と名づく。常に日の前に在りて行く。日は彼を見ず。彼は日を見ること能う」。即ち咒を説きて曰く。「『のうまくぶつだや、のうまくだるまや、のうまくそうきゃや、たんにやたあらきゃましまきゃましあづまししばらましあんだつだんなましまりしはらましなまくそとていそわか。王難の中に我を覆いて護れ。賊難、路を行きて曠野に路を失い晝日や夜中の水難や火難、羅刹の難、茶鶏支■(ニンベンに爾)鬼の難の中、毒藥の難にも。佛の語(ことば)・真實の法語・真實の僧の實語・天の實語・仙人の實語は、我を覆い護れ』」。咒して曰く。「たんにやたあらこうりあらこうりきりてきていろくしゃろくしゃ。我某甲、さばばゆかんだらぼだいきゃやすびそわか」。佛は言う。「若し人ありて此の法を行うを欲すれば、一切の法の中に此の法は最も勝る。若し人の末利支天を供養するを得るを欲せば、應(まさ)に金もしくは銀もしくは赤銅もしくは白檀もしくは紫檀を用いるべし。應に末利支天の形像を作るべし。其の造像法は、一つは天女の形に似る。身長は大小ありて一寸二寸三寸乃至一肘。其の中に最も勝る者は、一寸二寸を好(よ)しと為す。其の作像は又、須く最も好き手の博士を得るべし。八戒齋を遣受し日日に洗浴す。淨らかな白衣を著し之を作る。其の價直の者は、博士の語に随いて索(たず)ねて違うを得ず。此の像を作る。若し■(クサカンムリに必)芻に遠き道を行くを欲せば、袈裟の片中の裹に於いて彼の像を著す。若し五戒を持する優婆塞は、頭髻の中に於いて盛りて彼の像を著す。大小便の時には身から離し著を放す。身の上を共にするを得ずして、大小便の利から屏(まも)る。次に印および壇法を説く。二つの小指と二つの無名指を交叉し、掌中に在りて右にて左を押す。 二つの頭指は直ぐに豎(た)て、頭相は著す。二つの中指は各、■(テヘンに必/ねじ)りて二つの頭指の背の上に在りて頭は相■(テヘンに王のうえ突き抜け/ま)げて著す。二つの大指は並べ豎て縛りて二つの頭は側を指す。大指は來去す。此の是れ身姥陀羅尼印は前の身印に准ず。上は各、二つの中指の上節を屈む。頭は大指に向き甲に垂れ相背く。又、二つの大指は上節を屈む。頭は掌中に向く。此の是れ頭頂の印。若し比丘・比丘尼は、袈裟の中の裹に前の像あり。若し俗人ならば頭髻の中に像を著す。即ち此の頭印を作し以て像の上に案ず。二十一遍、誦咒し道路に於いて行う。前に准じて身印す。唯、二つの頭指を開きこと頭のあいだ二分許(ばか)り。即ち是れ護身印にして之を護身法に用う。左手の大指の頭は無名指の第一節文を押す。餘の四指を以て拳を把(にぎ)る。即ち是れ歡喜印。若し此の印を作し王臣の邊に向いて誦咒せば、即ち前の人は歡喜す。左手は臂を屈め前に向かいて牽く。頭指已下の四指を以て拳を把る。復た大指を以て頭指の甲の上を押す。次に掌中を開き孔を作す。右手を以て掌を申(のば)す。左手の節從り上向く。手の掌は之を磨し孔上に到る。即ち右の掌を以て指の孔の上を覆いて蓋(おお)う。心の裏に之を作す。左手の掌、是れ末利支の心。右手の掌、是れ末利支の身。左手の掌の心の中に於いて、我が身は我が身に著して蔵する末利支天に随いて在り。末利支は我が頂上に剤りて我が身を護る。此の是れ末利支印。口中に數數に誦咒すれば即ち大きなる驗を得る。行者は飯を喫するを得ず。唯、大麥・乳酪・酥菜等を食せ。若し堪忍せざれば自ら喫する飯を乞いて食せ。衆僧の食に於いて喫するを得ず。是くの如く十萬遍を満足せば、即ち驗を得る也。淨らかに潔き道場の中に於いて末利支の像を安ず。已(すで)に行者は日日に洗浴す。若し洗浴し手を洗い口を漱がずして道場に入るなら、身印を作し末利支を喚(よ)ぶ。已に種種の供養を安置す。日日に誦咒すること一百八遍あるいは一千八遍。是くの如く乃ち滿十萬遍に至り訖れば、然る後に地に於いて料理する所に好き處に於いて、惡物・樹根・瓦礫・毛骨等を拔き去る。地は之を平坦ならしめ堅く築く。其の壇を作る日は臘月の十五日。五色を以て之を作る。中心に末利支の座を著す。座上に華座ならびに像を畫し著す。式は即ち東に面して使者を安ず。名は婆多羅室利夜。北に面して使者を安ず。名は計室■(ニンベンに爾)。南に面して使者を安ず。 名は摩利■(ニンベンに爾)。然る後に咒師は之を喚び安置す。香華や飲食の八槃・燈の十六盞を以て、種種に供養す。咒師は西門において東に面して向かいて坐す。誦咒すること一千八遍。種種に供養し訖る。然る後に之を發遣す。更に別法あり。日月の蝕日に、此の壇法を作せば、大いに驗を得る也。若し人の東西の遠きに行かんと欲して路に在れば、先ず水壇を作り、末利支を喚び安置す。粳米・華和酥を取り、咒すること一遍にして一たび燒き、一千八遍に滿ち、并びに誦咒せば、去る所や趣かんと欲する處に隨いて大きなる驗を得る。又、更に一法あり。七日の中、日日に水壇を作り、末利支を喚び安置す。復た爐に火を著け穀木樹火を然(もや)す。此の柴火の中に於いて、咒して粳米・烏麻を燒くこと一百八遍にして、并びに誦咒す。日に三時、時別に一百八遍。乃至七日にして、此の法を作し訖る。王臣の邊に向かえば、前の人は他(よそ)へ散り走る。又、更に一法あり。若し論議を欲せば、前法に依り、梨枝の一百八段を火に燒く。一段は一尺。并びに咒すること七日、此の法を作せば、大いなる論の師を得る也。又、前の法に依り、酥を火に燒くこと一百八遍、并びに咒せば、一切の禽獸・毒蟲は侵害することを得ず。又、法において人の末利支に見えんことを得るを欲せば、前の法に依り、穀樹柴を以て火を然やす。天木の二十一段を取り、酥蜜酪を以て之に塗る。火に燒き、并びに咒すること日日にす。唯、粳米・飯・乳酥・の三種のみ喫す。餘の物を食することを得ず。七日の中、日日に種種の供養を倍して勝る。是くの如くして七日、此の法を作す時は、第七日の中に末利支の身が現じて、道場に入りて行者に問いて言う。『汝は何の法を求めんと欲するか』。是の時に行者は意に隨いて之に答う。時に末利支は聽きて許し歸り去る。即ち驗を得ることを知る。一切の諸天も亦、皆が歡喜す。又、法をおこなうこと七日の中、毎日三時(たび)、茴香草・白菖蒲・白芥子の三種を火に燒く。并びに羅闍の邊に向かい去(ゆ)きて咒し訖れば前の人は歡喜す。又、法において官人の邊に向かいて去くことを欲せば、前の法に依り白芥子を火に燒く。日日三時、時別に一百八遍、并びに咒す。七日の中、唯、粳・米・乳酪の三種のみ食す。餘の物を食することを得ず。是くの如くして七日の訖りて官人の邊に向かい去けば、前の人は歡喜す。又、法において前法に依り、阿末羅・梨葉を火にて燒くこと一百八遍、并びに咒す。是くの如くして七日、 一切の鬼病は治りて、則ち驗を得る。又、法において前法に依り、大麥を取り好く擣き(末を使うこと勿れ)蜜を以て和し、團を作る。大きさは李子の如くして、一百八箇。七日の中、行者は初日は全く喫い食わず。餘の六日は意に任せ食するを得。日日に團ずる所の大麥を火にて燒きて、并びに咒すせば、上なる歡喜を作す。印は是くの如くして、一百八團を盡(ことごと)く燒き訖る。水を以て火を滅し、後に其の煙りて上がる薫を兩手の掌に附け、誦咒すること二十一遍。願いて云え、我の手をして一切法の種種の驗を得さしめよ。者(てえれ)ば、即ち一切の驗を得て前の人は歡喜す。又、法において若し人の熱病なれば、好き青草を取り口に擬(に)せ、誦咒すること二十一遍。病うところを摩するを以てすること五十四遍、并びに咒せば、即ち差る。又、法において日日に一遍、誦咒すること三遍すれば大いに身を護るを作す。三遍なれば大いに結界を作し、五遍すれば愛する所の人をして意に任せ即ち得る。六遍の誦咒で結界せば、夜に塚墓に入りて一切の畏(おそ)れ無し。又、法において若し遠く行かんと欲すれば、先ず私の房に於いて七遍、薫陸の香を火にて燒き、并びに咒し訖る。道行きの時に著し數數に誦咒することを行えば、路の中に賊難・鬼難等は皆、近づくことを得ざる也。又、法において前法に依り、白月八日に淨らかなる室の中に於いて、好き香花と粳米・飯の少少を取り、火にて燒くこと一千八遍。法を行うの人は一日食さず。淨らかにして潔き衣を著し此の法を作せば、前の人は尊重し恭しく敬いて供養す。又、法において牛糞を未だ地に落ちざる時に取り、器を以て承(う)け取り、別の處に著すこと莫れ。即ち和水を用いて水壇を作り、壇の中心に佛像あるいは佛舍利を著し、復た母・犢・黄牛の乳を取りて酥を作り、金■(缶に本)の中に盛り著け、酥に於いて右手の無名指を以て之を攪(かきま)ぜ、并びに咒す。其の酥の上に火が若し出ずれば、即ち大いに聰明となりて一誦にして千偈を知得す。若し火の出でずして唯、煙と煖のみならば、即ち可(よ)き聰明を知得す。若し煙も煖も得ざれば、自ら身を地に伏せ、酥器の邊に於いて口を擬(なぞら)え、右手の無名指を以て■(キヘンに着)と為し、酥を喫せば、即ち少少の聰明を得る。又、法をおこなうは城の東門の外に於いてせよ。好き料理の地にて四肘の壇を作る。坏■(土に傳のツクリ)五箇を取り、中心に一を著し、四面に各一。又、四つの水罐を以て水を盛る。柳枝を以て口を塞ぐ。四面に於いて■(土に傳のツクリ)の上に之を著す。又、紫檀を取り水中に摩(す)り研ぐ。即ち其の水を以て、壇上に灑ぐ。赤き花を以て壇に供養す。復た胡撚りを以て四枚を支える。各、四つの水罐の邊に著く。復た五色の線を以て壇の紙面を遶る。壇の四面の外に於いて、種種の花香・飲食・■(サンズイに半)を以て諸鬼に與う。壇の四門に於いて青草の座を敷き、咒師は好き淨衣を著け青草の上に結跏趺坐す。摩利支および諸使者を喚び、種種の供養を安置す。咒師は手に青草を把りて誦咒す。草を以て自らの頭從り脚に向かいて之を摩すること一百八遍。咒師は手に末利支の字を作して身に印す。印す中に青草を把りて自らの頂に向け著く。一りの弟子を遣わし壇上の四つの水罐を将て、一つ一つ咒師の頂の上に於いて灌ぎて竟る。然る後に咒師は好き淨衣を著け護身印を作うす。佛を念じ佛に禮し摩利支に禮して訖る。龍樹花と龍腦香および酥を取り、香の三種を合わす。七日の中、咒師は唯、粳米牛乳粥のみを食し、餘の物を食するを得ず。日日に咒すること上の三種の藥に於いて一百八遍。乃ち第七日に至れば、將に彼の藥を自らの頂の上・右肩・左肩・心の上・咽の上・額の上に著ければ、驗を得る。此の語(こと)は別の法あるを問わずして用ゆ。又、法は前に依り、若し人の痔病を患えば、?線を取り咒索を作る。病う者の頭を東にし脚を西にしにし床上に於いて臥す。索を以て病う者の腰に繋ぐ。又、引き索を以て其の床を脚に繋ぐ。并びに咒すること二十一遍すれば、痔病は即ち差る。若し人の頸を患うありて治す法は、上に准じて唯、前に腰に繋ぐとするを改め、其の頸の上に繋ぐを異と為す。又、法において江の水の兩邊の泥土を取り、以て一百の鬼の形像を作る。其の中の鬼の王の名は毘那夜迦と曰う。此の鬼の王の頭は、象の頭の形に作る。其の餘の諸の鬼の頭は各各別にして、諸(もろもろ)の禽獸の形を作る。其の身・手・脚は總て人の形に作る。大小長短は四指あるいは八指許(ばか)りにして之を作る。紫檀木を取り、以て水に於いて之を研ぐ。其の水を以て泥を和するに用ゆ。地に於いて壇を作るに、五色の土を以てす。壇の上に於いて座處を作る。中心に一座、北に面して二座。南に面して二座、東に面して二座。中心の座の上に於いて、鬼の王の像を著す。其の餘の六座の上に、總て九十九の鬼の像を分け著す。諸香花を以て七盞を燃やすに及び、酥燈飲食等の種種の供養をす。并びに安悉香を取り酥と和し、火に燒きて用い、以て供養とす。咒師は西門坐に於いて東に面して向かう。末利支咒を誦すること七遍、種種の色線を以て咒すること二十一遍、然る後に壇の三面の諸の鬼の像を取り、中心の鬼の王の邊一處に聚め就き、之を著す。其の七色の線を以て、總て著する彼の鬼の像を縛り訖る。犢子の糞一百八團を取り、一つ一つ火にて燒き、并びに咒す。一つ一つの團を焼く時に、一たび誦咒す。『そわか、前に於いて先ず唱えて云う、一切の鬼は然る後に唱えて云え、そわか』是くの如く一百八團を盡して竟る。別の處に地を掘りて、深さ人の腰に至りて孔を作る。彼の所に縛る所の諸の鬼の像を將て、孔の中に著す。諸香花・種種の飲食を以て彼の鬼を供養す。然る後に上を以て孔の上を塞ぐ。堅く築き、以て地は平らに復す。其の鬼は永く出るを得ず。若し彼の咒師の業病にて死に臨むの時、心の中に意を作して彼の鬼を解放す。彼の鬼は脱するを得る。若し此の法を作せば、即ち末利支の大いなる驗、一切の咒驗を得る。又、法において一生の中、日日、唯、粳米乳粥を食し、數數に誦咒すれば、大いなる聰明を得る。四姓の中、婆羅門の大愛念を得る。若し酥酪乳を火にして燒けば、刹帝利の愛念を。若し大麥乳酪を火にして燒けば、毘舍の愛念を。若し烏麻滓を火にして燒けば、首陀の愛念を。又、法において若し人鬼の病にて口の全く語らざれば、水を咒すること二十一遍にして之を■(サンズイに半)すれば、即ち語る。又、法において鬼病にて口の合わさりて語らざれば、袈裟角を以て咒すること二十一遍、之を打てば、即ち語る。又、法において灰に手の捻じられたれば、之を咒すること七遍にして、四方の結界を散ず。又、法において泥を以て彈丸十箇を作り各を十方に擲てば、大いなる結界をなす。又、法において若し婦人の難産せば、烏麻油を咒すること七遍、以て臍の上を摩すれば即ち易き産を得る。又、法において若し他と共に論議し勝ちを得る時は他に相憎み嗔(いか)られ一隻の相言をせられ、又、他鬥と共に諍いて他に相言せられて官邊に枷に鎖せられ、罪の是非を問わるるの時は、白菖蒲を取りて咒すること二十一遍、右臂に繋ぎて著し、復た左手を以て歡喜印を作して、并びに之を咒せば、即ち大いに勝るの理を得る。又、法において若し人の蟲の螫(さ)すに毒せられる者は、咒師が五色線を取り咒索を作ること二十一結、以て自らの右手の臂の上に繋ぎて訖る。彼の螫すに向け、人の邊を去る。柳の枝を取り、之を咒せば、數數に手を以て彼の人を摩すれば、即ち差る。若し人の螫す所の蛇に惡毒せられて死に望むの時、咒師が自らの手を以て水を掬い取り、口を漱ぎ、七遍誦咒す。其の水を以て病う者に■(サンズイに半)すること二十一遍にして竟れば、即ち差る。又、若し人の身に惡しき瘡の生ずれば、泥を和して瘡の上に塗ること二十一遍、并びに咒せば、即ち差る。又、若し畜生の時氣の病に遇えば、城の正に中央に於いて然るべき穀樹にて火をたき、牛乳を以て火にて燒き、并びに咒せば、即ち差る。夜の裏に應に此の法を作す。其の明日の午時に穀樹を焼くの火を還して、白芥子油と白芥子を取りて相和し、火にて燒くこと一千八遍、并びに咒せば、即ち差る。又、法において倶■(口に魯)陀木を取りて一千八段とす(此の木の相状は菩提樹に似る)一つ一つ火にて燒き、并びに咒すること各一遍すれば、一切の鳩槃荼・藥叉等の鬼神は皆、悉く歡喜す。若し冬[クサカンムリ/瓜]少少を火にて焼くこと一千八遍すれば、一切の魍魎は悉く皆、歡喜す。若し塚墓の上の樹木を取りて一千八段にし、烏麻と相和し、火にて燒き、并びに咒すること一千八遍すれば、一切の大いなる惡しき鬼神は歡喜す。又、法において若し菩提樹の枝を取り一千八段にし、一つ一つ酥を塗り火にて燒くこと一千八遍にして、并びに咒せば、四大天王は歡喜し愛念す。又、法において若し人の癲に病めば、咒師は一切の五穀を取りて相和し、手を以て掬い取り、之を咒して火にて燒くこと一千八遍すれば、鬼神は歡喜し、即ち病を治すを得る。若し安悉香を取り、之を擣き丸と為し酥を塗り火にて燒くこと一千八遍し、并びに咒せば、摩醯首羅および傍邊の天の一切は歡喜す。若し前法を以て壇を作るに依り、種種の供養をし、壇の中心に佛像あるいは佛舍利を著し、喝■(口に羅)迦沙彌陀木(此の是れ苦練樹の別名)を取り三千八段にし、酥酪蜜を與(あ)えて中し之を塗り、一つ一つ火にて燒く。各一段に一咒す。是の如く三千八段を盡くす。此の法を為せば、四重・五逆の罪の滅するを造りて而して驗を得る。若し行者の前法に依り水壇を作り訖り白月八日より十五日に至るまで、日日、紫薑木を取り一千八段にし、酥を塗りて火にて燒き并びに咒せば、末利支は即ち道場に來りて入り、其の願う所を遂ぐ。爾の時、行者の眼は末利支の身を見て大いなる驗を得る。若し一日食さずして此の法を作し種種の供養をせば、末利支の大いなる驗を得る。又、若し錢財を得るを欲せば、?月十四日から十五日に至る兩日の中、黒日に三時、烏麻・粳米および粳米花の三種を取り、火にて燒き、并びに咒せば、即ち錢財を得る。又、法において若し魔を縛るを得るを欲せば、七日の中、日日、苦練樹、一名は菩提樹の枝を取り、一千八段とし、一つ一つ白芥子の油の中に塗り火にて燒けば、即ち縛るを得る。若し咒師あるいは俗人の此の咒法を行う時、官府之を知りて捉え得んとせば、枷に鎖され縛らるるの時、數數に此の咒を誦せば、縛らるるを永く得ず。若し人の相瞋れば、烏麻油滓と粳米糠を取りて相和し、火にて燒くこと一千八遍、并びに咒せば、即ち前の人の瞋りを即ち歡喜にするを得る。若し烏麻を取りて火にて燒やくこと一千八遍すれば、前の人は愛念して歡喜す。又、法において若し錢財を得るを欲せば、七日の中、日日に石榴草莖を取り、長さ六指に一千八段とし、一つ一つを火にて燒き、并びに咒せば、即ち錢財を得る。又、法において他人の處に向かい愛する所のものを索(ひ)かんと欲すれば、白菖蒲を取り、之を咒すること一千八遍、自ら臂の上に繋ぎ之を乞えば、得ざる所無し。又、法において二十一日、日日に三時、安悉香を取り、之を擣き丸と為すこと一千八丸。酥酪蜜中に塗るを用(もっ)て、一つ一つ火にて燒き、并びに咒し、王・百官の邊に向かい去(ゆ)けば、前の人は歡喜し愛念す。若し綱維を作るを得るを欲すれば、七日の中、日日に三時、衆名香を取りて之を擣き丸と為すこと一千八丸、一つ一つ酥を塗り火にて燒き、并びに咒せば、即ち綱維を得る。又、法において若し行者が洗浴して道場に入り、水壇等を作り種種の供養をし、末利支を喚びて安置す。是くの如く十萬遍に滿てば、此の法を作し訖る。然る後に口に云いて結界す(手に印を作すこと莫れ)。行者の願う所に随いて皆、成就することを得る。一切の難事は、易く之を弁ずるを得る。然(しか)すれば、他人を法を作す事を破る」。爾の時、末利支は佛に白して言う。「世尊、我に別法あり。いま説かんと欲する者は、好き紫檀の木を用ゆ。廣さ三指にして、長さは三寸。其の木の一面に末利支の形を刻み作る。女天に作る。其の像は左右の各に刻む。兩(ふた)つの末利支を作りて侍う者は、亦、女の形を作る。復た別の紫檀の木を以て蓋(がい)を作りて之を蓋(おお)う。此の像を作るのみ。遠き道を行かんと欲すれば、此の像を自らの身に離さず將て、隱し藏して之を著し、人をして聽かしめ知らしむこと莫れ。日日にして數數に誦咒す。若し願い欲する所あれば、水壇を作り、壇の中心に像を安ず。末利支を喚びて安置す。種種の供養を以てす。復た蓮華一百八箇を取りて以て之を供養す。其の供養の法は、手にて一つ一つの蓮華を取りて、之を咒して用い、以て供養す。復た烏麻粳米を以て火にて燒くこと一千八遍、并びに咒して訖り、像を把めば、種種の驗(此の語は應に知るべし)を得る。上の件の諸法は皆、水壇等を作り、種種の供養して始めて之に驗を得る。末利支は此の法を説きて竟り、諸天・龍八部・と佛に禮し、而して退く。 だつてつたあらきょれいあらきょれいきりていてさつばきゃらけいびさつぼうはとひつせいびさつばいているうはらひびろくしゃのうまく(某甲)やしゃそわか 一本ありて云う、天の像を作る法、其の像は二手、左の一つの手は臂を上向きに屈め平らに?にして左乳の前に當て拳を把り、拳の中に佛を把る。形は法を講ずる如く師高座の上に把る所の形。其の佛の中に於いて、西國の萬字の文(あや)の形を作る。亦、佛の像の胸の上の字の如きは、四つ曲りの内に各、日の形を作りて字とす。一つ一つ之を著し、四箇の日の形を著す。其の拂の上に焔の形を作る。右の一つの手は臂を申(のば)し及び指は解きて垂れ下がる。其の像を造る法は、像を畫すること一種にして別には無し。其の像の身長は一寸二寸ないし一肘。「だつてたあらくりあらくりけいりていたそわきゃらていびさつぼかんたらひびさつばいとるかんたらひへいかつろくしゃまくまく(某甲)やしゃそわか
曼殊室利菩薩は咒を説きて曰く、千轉と同じき頭に歸命す。
なぼうまんじゅしりえいくまらぼたやだつてつたかつりていひつだつばからふとしゅましゃらそわか
又、若し道行きに在りて賊に逢う時、咒して手の大母指に急ぎ指を把れば、賊に遇いて難は無し。若し咒して衣の袂あるいは衣の衿を、左に綟ること七遍にして急いで把り誦咒して過ぐ。
除睡咒
だつていたいていみていにていしきゃなだんていだちそわか
若し人の坐する中に多く睡(ねむ)き時、佛の前に於いて心を至して誦すること七遍、便ち少なくなり無くなる也。
毘沙門咒に曰く、なまくひらくらばんどしゃまかかつらじゃしゃせひそわかせばんばつふりそわか
若し浄らかな油を咒すること七遍もしくは二七の十四遍、臥する所に塗りて用ゆ。財物等を乞いて願う所の如く得る。
咒一切賊法
ほろなほろなしゅろかしゅろかさつしゃそわか
更に賊を縛るの咒あり。咒は、「きゃたかたそうきゃた、我は今、加■(口に託のツクリ)を為し、終に加■(口に託のツクリ)を解くを為さず」。
又、若し賊せられれば、香を焼き誦咒す。若し疑わしき者あれば、并びに名を稱う。若し知らざれば、但し面に當たりて誦咒し、之を咒す。賊は即ち自ら縛りて自ら物を盗むと道(もう)すのみ。然る後に解放せられて、大いなる驗を得る也。末利支提婆花鬘經
     ◆原文◆
佛説摩利支天經
    唐三藏沙門大廣智不空奉 詔譯
如是我聞。一時薄伽梵。在室羅筏城逝多林給孤獨園。爾時世尊告諸■(クサカンムリに必)芻有天女名摩利支。有大神通自在之力。常行日月天前。日天月天不能見彼。彼能見日。無人能見無人能知。無人能捉無人能縛。無人能害無人能欺誑。無人能債其財物。無人能責罰。不為怨家能得其便。佛告諸■(クサカンムリに必)芻。若有知彼摩利支天名常憶念者。彼人亦不可見亦不可知。亦不可捉亦不可縛。亦不可害亦不可欺誑。亦不為人債其財物。亦不為人之所責罰。亦不為怨家能得其便。若有善男子善女人。知彼摩利支天名求加護者。應作是言。我(某甲)知摩利支天母有大神力。我今歸命願護我身。無人能見我無人能知。我無人能捉我無人能縛。我無人能害我無人能欺誑我。無人能債我財物。無人能責罰。我亦不為怨家能得其便。……後略
     ◆書き下し◆
佛説摩利支天經
    唐三藏沙門大廣智不空奉る 詔譯
是くの如く我聞く。一る時、薄伽梵(仏陀)は室羅筏城逝多林給孤獨園に在り。爾の時、世尊は諸■(クサカンムリに必)芻に告ぐ。「天女あり。摩利支と名づく。大いなる神通自在の力を有(も)つ。常に日月天の前を行く。日天・月天は彼を見ること能わず。彼は能く日を見る。人の見る能う無く、人の知る能う無し。人の捉える能う無く、人の縛る能う無し。人の害する能う無く、人の欺き誑かす能う無し。人の其の財物を債(はた)る能う無く、人の責め罰する能う無し。怨家をして其の便を得る能わしむ無し」。佛は諸■(クサカンムリに必)芻に告ぐ。「若し彼の摩利支天の名を知りて常に憶(おも)い念(おもう)者あれば、彼の人は亦、見られるべからずして知られるべからず。亦、捉えらるべからざるして亦、縛らるべからず。亦、害せられるべからざるして、欺き誑かさるべからず。亦、人をして其の財物を債るを為さしめず。亦、人をして責め罰する所を為さしめず。亦、怨家をして其の便を得る能うを為さしめず。若し善男子・善女人ありて、彼の摩利支天の名を知り加護を求めれば、應に是の言を作すべし『我(某甲)摩利支天母の大神力を有つを知る。我は今、歸命し我が身を護ることを願う。人の我を見る能う無く、人の我を知る能う無く、人の我を捉える能う無く、人の我を縛る能う無く、人の我を害する能う無く、人の我を欺き誑かす能う無く、人の我が財物を債る能う無く、人の我を責め罰する能う無く、亦、怨家をして其の便を為さしめず』……後略
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