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画虎劈惡

八犬伝に出てくる巨勢金岡が描いたという一幅の画虎。瞳を描き入れることによって実体化した。人の胸の裡にあり良心を監視する倫理を象徴

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画虎劈惡について

画虎

 犬の曠野202「破戒の倫理」で論じたように、八犬伝に登場する画虎は、倫理を象徴している。倫理なぞ無視しても、実際には痛くも痒くもない。良心が食い破られるだけだ。しかし、いつもは絵空事、画餅に過ぎない倫理が実体化すれば、どうか。其れを叙述すること自体が、勧善懲悪小説の執筆だろう。最初期の職業作家として馬琴が、胸に秘めた想いではなかったか。
 八犬伝で画虎は、一休宗純に絡んで出てくる。序盤の主宰神が役行者であり、前半はゝ大/金碗大輔にも密教の雰囲気が漂う。後半になると、仏教関係では禅宗が前面に滲み出てくる。ゝ大も、いつの間にか禅僧になっている。終盤ともなれば、禅宗と混淆した老荘思想が強調され、八犬士は、まるで仙人にでもなったかのように、山奥へと消える。

八犬伝の根底                    3つの鍵言葉

生命の尊重

 第七十回、狩猟を好み殺生を重ねた知人/四六城木工作の横死に当たり、信乃は云う、「現天道ハ生を好して。殺を憎ませ給ふこと。是日の神の御こゝろ也」。このほか八犬伝で、【生命の尊重】に言及すること、枚挙に遑がない。仏教では馴染みの論理だが、いずれも「日の神」「大皇國」などの教えとして強調されている。日本固有のものだというのだ。馬琴が八犬伝で描いた理想世界は、民を国の基とし、生命を尊重する。

老荘思想

 八犬伝の構造は、老荘思想を最底部/根本とし、民俗信仰や仏教・神道が中位を占め、儒学は表層/上部構造に過ぎない。だからこそ、仁義礼智忠信孝悌といった儒教らしい徳目を示す玉の文字は、終盤に消える。八犬伝に於いて儒学は、人間の総体を規定すべきものではない。そして各思想は混じり合いながら、物語を動かす因果律となっている。また後半、仏教の中でも禅宗が前面に押し出されてくるが、此も馬琴好み、老荘思想と親和性が高いからだろう。

処女懐胎

 前近代に於いて、処女は、父親の所有物であった。父/里見義実のもとから離れた伏姫は、《誰のものでもない処女》だ。一方、八房犬は悪女玉梓の後身であったが、浄化された。浄化とは過去の経緯から切り離されることだ。過去の経緯を抹消するとは、個性の抹消であり匿名化だ。八房は、《誰でもなくなった》。
 誰のものでもない処女は、何の刻印も記されておらず、万人の母たる資格を有する。肉体によらず、《誰でもなくなった》八房と相感し、新たな生命/八犬士を発生させた。無記名の生命そのもの同士による、【処女懐胎】である。
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